泌尿器科の病気 最新治療技術 食事療法生活療法 前立腺・泌尿器ドック 前立腺癌検診とPSA検査 EDとその治療法
特徴
50歳以上の男性の5人に1人ぐらいがこの病気になると言われています。男性に固有の前立腺が年齢とともに大きくなり、膀胱や尿道を圧迫し、排尿障害を起こすものです。
原因
加齢や食生活を含めた生活環境の欧米化などが考えられています。
症状
・おしっこの回数が増える
・夜中にたびたびおしっこに起きるようになる
・おしっこをしようとしてもなかなか出ない
・出始めてから終わるまでに時間がかかる
・若い頃に比べ、おしっこの勢いが衰える
・がまんできずに漏らしてしまうことがある
検査
前立腺の診察(直腸的)、PSA(前立腺特異抗原)血液検査、超音波検査などを行います。
治療法(薬物)
α1遮断薬:前立腺や尿道の筋肉の緊張を和らげ、おしっこを出しやすくします。
PDE5-阻害薬(新しい薬物療法):前立腺・尿道・膀胱頚部・平滑筋の弛緩作用による排尿改善
5α還元酵素阻害薬:前立腺を直接小さくします。
植物製剤、漢方薬、アミノ酸製剤:炎症を抑える作用があります。
治療法(手術)
重症例や薬の効果が不十分な場合などには手術が必要です
①経尿道的前立腺切除術(電解質溶液利用のもの)
②レーザー前立腺核出術(HoLEP)
③経尿道的水蒸気治療(WAVE) 当院2023.4導入
「前立腺肥大症といわれています。お酒を飲んだ後、尿が出にくくなります。どうしてですか。日常生活で気を付けることを教えてください。」 (62歳・男)
前立腺の肥大が進行すると飲酒後、尿が出なくなること(尿閉)があります。
これはアルコールによって前立腺の血管が充血し、前立腺部の尿道が圧迫されるために、尿が出にくくなったのです。だからといって、お酒を一滴も飲んではいけないというわけではありません。控えめにすることが大切です。また、一度でも尿閉状態になったことがあれば、外科的な治療(経尿道的前立腺切除術など)も考えなければなりません。
次に日常生活で心がけることは以下のことです。刺激の強い食品(キムチやワサビなど)はできるだけ避けましょう。また、便秘には注意してくだ さい。便秘になると、直腸に溜まった糞便が尿道 を圧迫します。
また、散歩などの適度な運動や入浴などは、骨盤内の血液の循環をよくするために効果的です。逆に長時間のドライブやデスクワークなど、座ったままでいることはよくありません。
トイレが近いからといって水分を控えてはいけません。適量の水分を補給することが必要です。夜中にトイレに行く回数の多い方は、夕方からの水分を控えめにしましょう。
以上のことに気を付けることで、前立腺の病気のセルフケアができます。
「50歳頃からおしっこの出が悪くなってきました。」3年くらい前に検査で軽い前立腺肥大症と診断されました。最近、徐々に症状が悪化してきました。
このような症状に前立腺加温治療は有効でしょうか。治療費の保険適応はできるのでしょうか。また、治療後に勃起障害は起きませんか。教えてください。」(60歳・男)
前立腺肥大症は50歳頃より発生する熟年以降の男性を悩ます病気です。
治療法としては、薬物療法や手術療法(経尿道的前立腺切除術=TUR-P法、前立腺レーザー切除術、前立腺高温度加温治療など)がありますが、前立腺肥大の程度や排尿症状の程度により、治療法が決められます。
排尿症状が悪化してきて、残尿感が生じるようになれば、手術療法が効果的です。
前立腺高温度加温治療は、尿道粘膜に麻酔をかけ、前立腺を尿道からマイクロ波で加温して治療する最新の治療法です。治療後肥大した前立腺組織が壊死を起こし、尿道圧が低下するので、徐々に排尿状態が改善してきます。
当院でも400人以上の患者さんに対して行い、有効率も80%以上です。
治療時間も一時間、一回のみで終了する画期的な日帰り治療法です。健康保険も適応されています。
従来より行われている TUR-P法は、術後,逆行性射精(精液が尿道から出ない)が必ず起こりますが、前立腺高温度加温治療では、ほとんど起きることはありません。勃起障害などの心配も無用です。高齢者や心疾患、脳梗塞などを持つリスクの高い患者さんにも可能です。
前立腺高温度治療は、高齢化社会を迎え、ますます増加する前立腺肥大症の患者さんにとって、より安全な治療法と思われます。
なお、長期的な臨床効果については経過観察が必要です。すべての人に適応できるわけではないので、治療を受ける前に医師と充分に相談してください。
「前立腺肥大症の手術をするとインポテンツになると聞きますが本当でしょうか?」(58歳・男)
前立腺肥大症の手術は、現在、経尿道的前立腺切除術(TUR-P)やレーザ一手術 などの内視鏡を用いたものが主流になっています。このため、手術後急に勃起不全を起こす危険性はほとんどありません。
というのは、内視鏡手術だと勃起に関係する神経を損傷することはまず考えられないからです。
しかし、手術をすると前立腺部の局所に炎症が起きるため、それが原因となる排尿痛や排尿前後の尿道の不快感により、多少勃起力が低下したという患者さんはいます。また、手術をしたことによる精神的影響で、勃起カが低下することもまれにあるようです。
しかし、逆におしっこの出がよくなったことで、若返ってきたという患者さんもいます。
ほかにも手術療法の問題点はあります。TUR-Pなどの内視鏡手術が行われると、膀胱と前立腺の間にある内尿道的括約筋が切除され、射精時に精液が尿道側に出ず、膀胱側に出てしまう状能がおこります。これを逆行性射精といいます。このため、射精感があっても精液が全く出ない状態になります。この逆行性射精が気になる方には、前立腺高温度治療を勧めています。
「前立腺肥大症で薬を服用していますが、症状が改善され ず、手術を勧められました。一度手術をすれば、再発することはありませんか?」 (70歳・男)
前立腺肥大症で薬物療法の効果がない患者さんや、残尿の多い患者さんには手術療法が最も効果的です。手術の方法は、経尿道的前立腺切除術(TUR-P)やレーザー手術が一般的です。
特にTUR-P手術は受けた人の90%以上に症状の改善がありました。また、再発率は5から10%といわれています。
手術後、前立腺肥大が再発する原因は、TUR-P手術で切除した前立腺の一部が残存し、そこから再発することがあるからです。また、炎症などで膀胱頚部に狭窄を生じることもあり、これによって再発することもあります。
また、レーザー手術や前立腺高温度治療も、長期的に経過観察が必要で、手術をしても再発の可能性はある程度否定できないのが現状です。
「前立腺肥大症はどうしておこるのですか? また前立腺肥大症を予防する方法があれば教えてください」(65歳・男)
高齢化社会の到来と共に前立腺肥大症や前立腺がんの増加が警告されています。
前立腺は加齢と共に肥大していくことは既に明らかになっています。また、前立腺は男性ホルモン依存性副性器なので、男性ホルモンによってその成長や増殖がコントロールされていることも明らかになっています。実際、思春期前に去勢された男性には前立腺肥大が発生しないことから、加齢と男性ホルモンが重要であることに間違いはないでしょう。
人種や地域的要因の観点から考えると、前立腺肥大は白人に多く、中国人や日本人が最も少ないそうです。しかし、米国在住の中国人だとその頻度はかなり高くなっています。
このことから、欧米型食生活(高脂質・高蛋白)が影響していると考えられていますが、まだ結論は出ていません。
性生活の観点から考えてみると、高齢になっても性生活を持続している場合、前立腺肥大の頻度が高くなるとの報告もありますが、これも不確定です。
とりあえず、前立腺肥大症の原因についてはまだ不明なことが多いので、これといった予防法はまだ見つかっていませんが、生活で気を付けることとして、「お酒の飲み過ぎを控える」、「長時間の座位生活を控える」、「適度な運動をする」、「毎日入浴をする」、「おしっこを我慢しない」などがあげられます。
特徴
前立腺癌検診で日本人の男性の50歳以上の80人に1人発見されている前立腺癌は、アメリカにおける男性のがんで最も多く、死亡率の第2位を占める社会問題となっております。日本でも欧米型の生活様式(ライフスタイル)の変化に伴い近年最も急速に増加傾向にあるがんの一つと言えます。2015年の国立がん研究センターの「がん罹患数予測」で男性が罹るがんの第1位になっています。しかしながら前立腺癌も早期に発見すれば治る可能性の高いがんです。前立腺がんの発見と診断には前立腺・泌尿器ドックや前立腺検診などが不可欠です。
症状
前立腺がんは前立腺の外側の外腺と呼ばれる部分から発生するため、初期には症状がほとんどありません。前立腺肥大症のような排尿困難などの症状がでるのは遅れがちです。
診断
直腸診(前立腺の触診)、前立腺特異抗原(PSA)採血、エコー検査など(泌尿器ドックと放射線治療へ)
治療
早期発見の前立腺がんは放射線治療・根治手術が主体。進行例ではホルモン療法が主体となります。詳しくは拙書「図解 前立腺ガンは怖くない!」を読んで下さい。
特徴
こんな症状があると前立腺炎が疑われます。
・残尿感
・尿が近い
・尿をした後、尿道にツーンとした感じが残る
・尿が出にくい
・陰のうと肛門の間あたりに何となく不快感がある
・精液に血が混じる
原因
バイ菌の感染で起こる細菌性とバイ菌がないのに起きる非細菌性があります。非細菌性のものは、クラミジアなどによる性感染症やアレルギーや冷えなどが原因とされますが、精神的な要素も加わり、治りにくいことがあります。
予防
慢性前立腺炎は、前立腺肥大症と違い若い人に比較的起こりやすいものです。疲労や飲酒、精神的なストレスが影響しています。心にゆとりを持って、からだに無理をさせないことです。長時間の座位もできるだけ避けましょう。不謹慎な性交をしないようにしましょう。
症状
七転八倒の痛み、「死ぬほど痛い」病気といわれているのが泌尿器系の「尿管結石症」です。この痛みは尿管内に結石が落ちることで尿流の通過障害のために急激な腎孟内圧の上昇が生じることによるものと考えられています。また、この痛みは「せん痛発作」と呼ばれ、一般には小さい結石ほどその痛みは強く「尿管結石はイヌの遠吠えのごとく、小さいものほどよく吠える」と例えられています。この病気の他の症状としては、血尿を生じることが多く、このため尿検査とレントゲン検査などで比較的容易に診断がつきます。
原因
大半は原因が不明ですが、体質や食生活なども原因の一つと考えられています。特に腎、尿管結石は1920年頃からヨーロッパの各地で増加し、日本でも10年以上遅れて増加してきており、食生活に変化が原因の一つと考えられています。
治療方法
治療法は5ミリ以下の小さな結石は水分を多くとり、ランニングや縄とびなどの運動をすることで大半は自然に出てしまいます。しかし、大きな結石や痛みを繰り返す場合は手術療法が必要です。